【よくある相談】亡くなった人(被相続人)が認知症になった後に作成した遺言は,有効なのでしょうか。

【設例】

先月,87歳の母が亡くなりました。母は80歳を過ぎた頃から認知症の症状が出始め,実家で母と同居していた次女が介護してきました。長女である私は実家から遠方に暮らしていたことから,年に数回しか母に会いに帰省できませんでした。先日,次女から,母が遺した遺言書があると連絡があったので,その内容を確認したところ,遺産のすべてを次女に相続させるという内容でした。遺言書が作成された日付は2年前となっており,母は認知症の影響により遺言書を書けるような状況ではなかったはずです。このような遺言に基づく相続手続きを受け容れることはできませんが,どうしたら良いのでしょうか。

 

【回答】

遺言無効確認訴訟と呼ばれる裁判により,遺言が無効であることを認めてもらう必要があります。ただし,認知症になった後に作成された遺言であっても,必ずしも無効であるとは限りません。遺言の効力は,認知症であることだけではなくその他様々な事情が考慮されてその有効性が判断されます。

 

 

民法は,15歳に達した者であり(民法961条),かつ遺言をする時に遺言能力があれば(同法963条),遺言をすることができると定めています。遺言能力とは,自分のする遺言の内容と,その遺言によって発生する法律上の効果を理解したうえで判断する能力のことをいいます。

 

遺言者が認知症を患っていたのであれば,遺言書に記載する内容や,その遺言によって自分の相続後にどのような遺産の承継などが起こるのかといったことを理解できなくなっている可能性がありますから,認知症の方の作成する遺言は,無効である可能性があります。そして,そのような遺言の内容に納得できない相続人などにより,遺言が無効であるとして,実際に多くの裁判が起こされています。

 

しかし,認知症の方が作成した遺言書であるからといって,全て無効となるわけではありません。裁判所は,遺言者の認知症による精神上の障害の有無だけではなく,その障害の内容や程度について,カルテや介護記録などから認定し,その状況に鑑みて,遺言者が遺言書に記載された内容を理解し,判断したうえで作成したかどうか,遺言能力の有無を検討します。

 

もっとも,この判断は容易なものではありませんから,様々な事情が判断材料として多角的に検討されます。その際には,遺言書の内容や,その内容と遺言者の生前の言動や性格,考え方などが整合しているのかどうか,遺言書作成の動機や経緯から遺言書の内容が不自然ではないかどうかなどが検討されます。

 

たとえば,設例のように,遺言書の内容が遺産のすべてを特定の相続人に与えるといった単純な内容であれば,それほど高い判断能力は遺言書の作成当時に必要ではなかったと考えることができます。また,設例では,次女は被相続人と同居し,その介護を行ってきていますから,被相続人が遺言書を作成する動機として,一緒に過ごし,面倒を看てくれた子にすべての遺産を与えようとする遺言は矛盾しません。

 

しかし,逆に,被相続人が特に長女に愛情を注いでいたという事情があるのであれば,遺産を長女に一切相続させないとする遺言は,遺言書を作成する経緯としては不自然ですから,遺言能力がなかった方向に働く事情として考慮されるでしょう。

 

このように,遺言書の作成時に,被相続人に遺言能力があったのかどうかを後から証明することはとてもむずかしいことです。そのため,認知症などにより判断能力に不安がある方が遺言書を作成する場合には,紛争の予防のために,遺言書の作成時に,遺言能力が十分に認められる状態であったことを証明する医師の診断書を作成してもらったり,判断能力に問題のないことを示す映像をビデオ録画するなど,対策を講じておくことが重要となります。

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