遺言によってできること(前編)

遺言書に記載したことは、法的に実現できなければ意味がありません。そして、遺言によって法的に実現できる内容は、法律上決められています。ですから、遺言書を作成する際には、遺言書に書いて法的に意味があるものと、そうでないものを意識する必要があります。そこで、今回は、遺言によってできることをご説明します。

 

1. 遺産相続に関すること

1-1. 相続人の廃除(または廃除の取消し)

法定相続人による被相続人(亡くなった方)に対する虐待など、法律上、相続人としての地位を失わせることができる事情がある者について、その者の相続権を剥奪することを遺言書の中で書くことができます。このことを、相続人の廃除といいます。

 

また、被相続人の生前に、既に廃除されていた相続人に対し、相続後、その廃除を取り消して、相続人としての地位を復活させるようにすることもできます。

 

相続人の廃除(または廃除の取消し)の手続きとしては、遺言の内容を実現する者である遺言執行者と呼ばれる者により、家庭裁判所に対して請求がなされ、廃除(または廃除の取り消し)が認められる必要があります。

 

1-2. 相続分の指定(または指定の委託)

複数の相続人(これらの相続人のことを共同相続人といいます。)がいる場合に、被相続人が、共同相続人それぞれが遺産を相続する割合(これを相続分といいます。)を決めることができます。たとえば、遺産が預貯金1200万円のみである場合に、相続人が被相続人の妻と母の2名のみであったときには、それぞれの法定相続分は、妻が3分の2、母が3分の1であるため、遺言書を残さずに被相続人が亡くなったのであれば、妻は800万円、母は400万円を相続することになります。しかし、被相続人は、遺言書の中で、たとえば、妻と母の相続分をそれぞれ2分の1ずつと指定することができます。この場合には、妻と母はそれぞれ600万円ずつ相続することになります(ただし、このように妻の相続分を減らす場合に、妻の遺留分を割り込むような相続分の指定をしてしまうと、妻にから母に対し遺留分減殺請求がなされてしまう可能性があることには注意が必要です。)。

 

また、共同相続人の相続分を指定することを、遺言書の中で第三者に委託することもできます。

 

1-3. 遺産分割方法の指定(または指定の委託)

遺産を相続人の間でどのように分割するか、つまり、誰がどの遺産を受け取るのかについて、被相続人が指定することができます。たとえば、相続人が配偶者と子の2名のみであり、遺産が持ち家と預貯金のみの場合に、遺された配偶者には、その住む場所を確保するために持ち家を相続させて、残りの預貯金については子に相続させるというというように、遺産分割の方法を指定することができます(ただし、子の遺留分を割り込む遺産分割の方法を指定した場合には、子から配偶者に対し遺留分減殺請求がなされてしまう可能性があることには注意が必要です。)。

 

また、遺産分割方法を指定することを、遺言書の中で第三者に委託することもできます。

 

1-4. 遺産分割の禁止

遺産分割方法を指定するのとは逆に、共同相続人の間で遺産分割をすることを禁止することができます。この禁止期間については制限があり、被相続人の死後、最長5年間です。たとえば、上記の例のように、配偶者が持ち家に5年間は住めるようにしたいと望んでいる場合には、遺産分割を禁止することも選択肢として考えられます。

 

1-5. 相続人相互の担保責任の指定

ある相続人が相続した遺産が、たとえば建物の場合に構造上の欠陥があったり、絵画の場合に実は他人の物であったなどの不都合があった場合には、共同相続人はそれぞれの相続分に応じて、その問題がある遺産を相続した相続人が被った損害を賠償する責任を負わなければなりません。このことを、担保責任といいます。被相続人は、この担保責任の負担者や負担割合について、遺言によって指定することができます。たとえば、相続人が子であるA、B及びCの3名のみであり、Aは1200万円の不動産、Bは1200万円の預貯金、Cは1200万円の株式を相続したとします。この場合に、Aが相続した不動産に、欠陥があったため、実際の価値は600万円しかなかったのであれば、BとCは、それぞれ、担保責任として、相続分に応じ、200万円ずつ、Aに支払わなければなりません。しかし、遺言書に担保責任の割合を指定することにより、たとえば、Bは担保責任を負わず、Cのみが負うと遺言書で被相続人が指定すれば、Cだけが400万円の支払義務を負うことになります。

 

1-6. 遺留分減殺方法の指定

一定の法定相続人(兄弟姉妹以外の配偶者・子・親)には、遺言によっても奪うことのできない最低限の遺産を受け取る権利が保障されています。これを「遺留分」といいます。それにもかかわらず、遺言書で、相続人または第三者に対して遺産を与え(遺贈といいます。)、その結果、法定相続人の遺留分を奪う内容の遺言となっている場合には、遺留分を奪われたれた相続人は、遺贈を受けた者(受遺者といいます。)に対し、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)という方法によって、遺留分に相当する財産を返すことを請求できます。遺言書で遺留分減殺方法の指定がなければ、たとえば、遺留分1000万円分を奪われた相続人であるAが、2000万円ずつ遺産を受け取った受遺者BとCに対して遺留分減殺請求する場合には、受け取った遺産の価格の割合に応じて返還しなければならなくなります。よって、BとCは、500万円ずつを、Aに返還する必要があります。

 

遺言書では、この遺留分減殺請求によって返還されるべき財産の割合(金額)を指定したり、返還されるべき遺産の順番を指定したりすることができます。たとえば、Bは遺産の8割(800万円)、Cは遺産の2割(200万円)を返さなければならないと指定することができます。また、Bの遺産から先に返還しなければならないと指定することができるため、Bのみが1000万円を返還しなければならないことにもできます(ただし、Bも遺留分をもつ法定相続人である場合に、Bの遺留分を割り込む減殺はできませんので注意が必要です。)。

 

<次号2017年12月22日(金)掲載予定、「遺言によってできること」(後編)へ続く>

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